もくれんとおじさん
あ、モクレンのつぼみの外皮じゃないか!
どうやって12階の屋上まで上がって来たんだろ。
いくら突風とはいえ35mも舞い上がるなんてなあ...
「あ!、きみきみ!」
ん?どこかで声がする。
誰も....声を発した様子はないのに..そらみみ?
「空耳じゃないよぅ、あたしだよぅ」
げっ!
もくれんのつぼみの皮がしゃべってんぞ!
「あんた、昨日瑞穂区にいたよね!写真撮ってたよね!」
う..うん、撮ってた。
「マラソンのあとの静かなところへ来て、あたしたちの花を撮ってたの、知ってるよ」
見てたのか。
「人がいなくなってからじーーーっと見つめてたからね。小汚いオヤジがカメラ提げてきたなぁって落ちた花びらくんたちと話してたの。」
小汚いオヤジで悪かったな!
それにしても花びらとつぼみのかすが交流してたとは驚いた。
「かすって言うなよぉ。」
外皮か?托葉か?
「知らないよ。でもかすはやめて」
ふんふん。
「そいでね、あんた、落ちた花びらくんの写真撮ってたでしょ。はなびらくんね、喜んでたよ。」
ふーん。
「ふーんて...感動のない人だね。彼女ね、花として一番きれいだったとき、だれも見てくれなかったんだって。」
うん。
「なのにね、あんたが写真撮ってくれたってニコニコしてあたしに話すんだ。」
ふうん。
「なんも感じねーのかよ」
花びらだしなぁ。
ただ緑の草の上に乗った花びらがきれいだなと思っただけなんよ。
あんまり関心する写真じゃないからさぁ。
「まあいいや、そんなやつに話したあたしがバカだった。」
そんな言い方せんでも...
それよりきみはなんで言葉が話せるんだ?
「え、普通だよ。人間が話せないだけだ」
そなの?
「うん。ほれ、あそこに飛んでるからすさんともあたしたちは話せるんだよ。からすさんだけじゃないよ、お魚さんとも話せるし、ちょうちょさんともおはなしできる。話せないのは人間だけ。」
じゃ君はなんで話せるの?
「あたしね、神様に頼んだの。花びらくんの喜びを写真撮ってた人に伝えたいって。そしたら少しだけ話せるようにしてあげるって言ってくれたの。」
へぇ〜。
「特別なの。」
ほぇ〜。
「人間だってね、昔はみんなと話せたんだ。でもあるとき神様に頼んだんだよ。
『一番になりたい』って。『一番にしてやってもいいが、そのかわり他の者たちと永久に話しができなくなってしまうが、それでもいいか?』と神様は言った。人間は『全然構わないから一番にして』と頼んだの。それが今の人間。」
・・・
はなびらくんはまだあそこにおるんかな。
「さぁね、風に乗っちゃったかもねー。あんたが写真撮ってくれたからってうれしくなってどこかへでかけちゃった」
風に乗って?
「うん、あたしみたいね(^_-)---☆Wink」
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